金融機関への業績説明の仕方

融資の申込みや返済計画の変更をした企業等に対して、金融機関は経営者自身による業 績の説明(情報開示)を求めています。では、具体的に何をどう説明すればいいのでしょうか。実際に、金融機関へ定期的に業績の説明を行っている企業の例を見てみましょう。

【S社の概況】
●ビル、店舗用の内壁材の製造・販売
●A銀行に借入金の返済猶予をしてもらい、経営改善計画を提出し、経営改善に取り組ん でいる。
●平成22年度(平成22年10月~平成23年9月)に、売上6億円、経常利益200万円を目標とし、黒字転換を目指した。

出売上未達成の原因を分析し、対策を説明

平成23年6月下旬、S社長がA銀行に出向いて、5月の業績を説明しました。

S社長は、5月の売上実績について、震災の影響が大きかった4月よりは改善したもの の、目標の5,000万円に対して4,000万円(80%)となったことを報告するとともに、そ の要因と見通しを次のように説明しました。

大口だったショッピングセンターの増改築工事が震災の影響で4月中旬まで中断したために、予定していた納品が大きくずれ込んだことが影響しました。

しかし、現在は、工事が再開したことに加えて、震災復旧・復興関連での受注があるため、6月は 4,500万円の売上目標に対して、5,000万円以上を見込んでいます。

売上は改善したが、利益率が低下

6月の業績説明では、ショッピングセンターの増築工事の再開と震災復旧関連の受注に よって、4,500万円の売上目標に対して、実績5,600万円と大きく目標をクリアしたこと、売上が順調に推移しており、7月は5,000~5,200万円程度の受注を見込んでいることを報告しました。

しかし、原材料の値上がりや大口受注の利益率が悪いことから、売上の伸びほど利益が 伸びておらず、その対応を説明しました。

原材料について新たな仕入先を探しており、また、大口の取引にこだわらず、小口でも利益率が高いものは確実に受注していく方針です。

決算報告で、今後の対策を説明

決算報告では、目標の売上6億円、経常利益200万円に対して、実績は、売上6億1,000 万円、経常利益100万円となり、黒字転換に成功したものの、経常利益が未達となりました。これについて、S社長は、今後の対策を含めて次のように説明しました。

復興関連での受注が大きく、売上を達成することができました。
しかし、原材料の値上がりや大口取引での利益率の低下が影響し、経常利益が目標に届きませんでした。今後は、復興関連での新たな納品先について、継続的な取引ができるよう重点的に営業訪問を行います。また、原材料の値上がりをはじめ、電気料金や石油などの値上がりが予想されるため、省力化や製造ロスの削減のために、作業のムダ等を洗い出しているところです。

金融機関も社長の姿勢を評価する

このような社長の説明に対して、A銀行の担当者は、「決算書の数値だけでなく、現状 分析、改善点、具体的な売上の見通しについて、自分の言葉で説明されるので、経営に対 する姿勢がよくわかります」と高く評価しています。