会社は、販売や製造のために、商品、製品、原材料、仕掛品などを在庫(税務・会計では「たな卸資産という)として保有しています。在庫管理はきちんとできていますか。
在庫管理ができていないとどうする?
あなたの会社では、次のようなことはないでしょうか。
- 倉庫内で在庫を探すのが一苦労。
- 入出庫作業にかなり時間がかかる。
- 過剰在庫、不良在庫、陳腐化品などが多い。
- 在庫の紛失が多い。 □在庫の保管スペースが足りない。
- 在庫がないと勘違いして余分に仕入れてしまう。
- 欠品が多く、販売機会を失うことが多い。
もし、心当たりが1つでもあれば、以下の在庫管理の5原則を実行しているかどうかを 点検しましょう。
1日常の受払管理をきちんと行う
商品等の入庫、出庫、移動、廃棄などがあったときは、現物と納品書、出荷伝票等を確 認し、速やかに、商品台帳等へ「単価」「数量」「金額」を記入・入力することで、常に、帳簿上で正しい在庫を把握することができます
2倉庫内定期清掃、整理整頓をする
倉庫内の整理整頓をして、何が、どこに、どれだけあるかが一目でわかる状態にしまし ょう。倉庫内が整理整頓されていないと、配送ミスや出荷作業に時間がかかったり、欠品 や過剰在庫、不正確な実地たな卸の原因にもなります。また、横流しなどの不正を誘発し かねません。
3実地たな御を定期的に行う
実地たな卸は、決算時には、必ず実施しますが、期中においても、毎月、少なくとも3 か月に1回の実施が理想的です。 実地たな卸を定期的に行っておくと、決算時の実地たな卸がスムーズにできるうえ、不良品の発見や滞留在庫、過剰在庫等を把握し やすくなります。 また、きちんとした在庫管理と実地たな卸による在庫記録等は、証拠資料にもなります。
4在庫数が帳簿と合わない原因を調べる
実地たな卸で数えた在庫数と帳簿上の数量が合わない場合、その原因を調べます。 原因の多くは、受払時の商品、数量の誤りや台帳への記入・入力ミスのようです。
5不良在庫などを定期的に処分する
実地たな卸で発見した、不良品や陳腐化晶、滞留在庫などは、ルールに従って、値引販売するものや廃棄処分するものに分けます。
事例 実地たな御に実施と記録で裁判に勝訴
家具販売業A社は、火災によって社屋や倉庫が全焼する事態に見舞われました。その後、損害保険会社との間でで保険金支払いを巡って裁判となりました。 保険会社は、在庫家具について、ある時点の在庫金額に、仕入高や返品率等を加算・減算して推計した約2,000万円を主張し、一方、A社は、たな卸記録等を根拠に約5,000万円を主張しました。 A社では、日頃から顧問会計事務所の指導を受け、決算期には、実地たな卸を徹底して行い、その状況をカメラでも記録していました。 裁判では、そのようなたな卸の記録等が証拠となり、A社の主張が認められて、全面勝訴となりました。
ここに注意!
廃棄処分する場合は、破損状態等がわかるように日付入りの写真や廃棄業者の証明書など証拠となる記録を残しておきましょう。
在庫管理と実地たな御の状況をチェックしてみましょう!
- 商品等の受払いの際、速やかに商品台帳等へ「単価」「数量」「金額」を記入・入力している。 入出庫時には、管理担当者が納品書などの証憑書類と現物とを確認している。
- 各商品等は、倉庫内の決められた場所に正しく保管され、どこに、何があるかが一目でわかるように整理整頓されている。
- 決算時以外にも、実地たな卸を定期的に行い、実際の在庫と帳簿上の数量、金額に差異があった場合には、直ちに原因を究明している。
- 実地たな卸の際にチェックしたたな卸票やメモなどの原始記録を保管している。
- 社長自らが定期的に倉庫など現場に出向いて、商品等をチェックしている。
- 外注先や委託先などに預けている社外在庫についても確認している。
- 廃棄処分は、決められたルールにもとづいて責任者の承認を得て処分し、その商品の写真や処分業者の証明書などを残している。
- TKCの「月例経営分析表」などを利用して、在庫に関する指標をチェックしている。