Author Archives: 梅本会計事務所

売掛金の回収は大丈夫ですか?

倒産が増えるとの予想が!

東京商工リサーチの調査によれば、昨年の倒産件数は、中小企業金融円滑化法などの資 金繰り支援の効果もあって、前年比4.4%減の1万2,734件となり、3年連続で前年を下回りました。しかし、負債1億円未満の倒産が約7割を一占めたほか、、資金躁一り支援を受寸ナたものの業績を回復できずに倒産してしまう例が前年の3倍(49件→149件)あり、倒産に至らないまでも経営手法に悩む企業は、さらに増 加することが予想されます。

売掛金回収に対する自社の姿勢は?

今後、取引先の業績悪化から、支払遅延が増え、そのまま売掛金の回収ができなくなる という事態も十分予想されます。

中小企業では、支払いが遅延している取引先に対して、何の対応もとられていなかった り、ついつい情に流されたり、弱腰になってしまいがちですが、自社まで窮地に陥るとい う事態は避けなければなりません。

売掛金回収は、回叫射犬況を常にチェックし、支払遅延に対しては、相手方に連絡し、その理由を聞くなど、回収に対する自社の姿勢や 行動を明確にしておきましょう。

未回収の長期売掛金は、金融機関から「不良債権ではないか」と見られ、信用を落とし かねません。

チェックリストを参考に、自社の売掛金回収体制を点検してみましょう。

<売掛金回収体制の点検をしてみよう!>

  1. 毎月、請求書は誤りや漏れがないよう確実に発行していますか。
  2. 得意先ごとの売掛金の状況を把握し、入金や回収遅れをチェックしていますか。
  3. 売掛金の状況について社長、営業担当、経理担当との間で情報を共有化していますか。
  4. 決算前など定期的に売掛金の残高確認書を取引先に送付していますか。
  5. 支払遅延があれば、金額の多少に関わらず相手に理由を確認し、確実に支払ってもらう日時を相手と取り決めていますか。
  6. 未払いの理由が不合理であれば、以後の販売を見合わせたり、在庫の引き揚げや法的手段で対応していますか。
  7. 長期や大口の滞留売掛金については、社長自らが回収にあたっていますか。

問違いやすい1人5,000円以下の飲食費の処理

税務上、取引先などの接待のための飲食費は、それが1人当たり5,000円以下であれば、 交際費等から除かれ、経費(損金)にすることができます。

この飲食費の処理については、誤りの多い事例の一つとして挙げられており、税務調査 でも、重点的にチェックされるところなので、注意点を再確認しましょう。

注意1 飲食費の内容は?

ここでいう「1人5,000円以下の飲食費」とは、あくまでも得意先など社外の事業関係者への接待のための飲食費のことです。

したがって、自社の役員、従業員またはこれらの親族などを対象にした、いわゆる社内 飲食費は対象になりません。

注意2 1人5,000円以下の計算(判断)は?

1人当たりの金額は、次のように計算します。

飲食費の合計額÷参加人数=1人当たり金額

●計算にあたっての注意

①1人5,000円以下かどうかは1店舗ごとに計算します。

②接待ゴルフや観劇、旅行等の催事に伴う飲食費は、「1人5,000円以下の飲食費」には  該当しません。

③1人5,000円を超えると全額が経費になりません。

④消費税の取扱いは、自社の経理処理が、税込経理であれば税込みで、税抜経理であれ  ば税抜きで計算します。

注意3 必要事項を記載した書類を保存

この規定の適用を受けるためには、飲食に参加した人数や相手先の名前など、明らかに しなければならない事項があります。そのため、領収書の他に、次の事項を明記した書類 を作成し、保存しておく必要があります。

●記載が必要な事項

①飲食があった年月日

②飲食に参加した得意先、仕入先などの氏名、名称とその関係

③飲食に参加した人数

④飲食費の金額と店名・所在地

労働時間とは?(労務トラブル防止のための基礎知識)

労働時間に対する認識不足や誤解が、労務トラブルにつながる事例があります。労働時間と残業時間についての基本をおさえておくことで、トラブルを避けるだけでなく、就業規則の整備にも役立ちます。

機械メーカーの品川工業では、品川社長と総務の上野課長が、残業をめぐる労務トラブルなどを未然に防止するために、その対応について話し合っていました。

1「法定」と「所定」2つの労働時間の違いは?

(上野課長)社長
うちの労働時間は、正式にいうと、9時~17時でしたよね。18時ではな かったですよね。

(品川社長)
うちの会社は、よくある「クジゴジ(9時 ~17時)」だよ。なんだ今さら?

(上野課長)
いえ、法律では労働時間は8時間だと聞いたものですから……。当社は、休憩時間(1時間)を除くと7時間勤務になりますね。法令上、問題になりませんか?

(品川社長)
???……。訳がわからん。よく調べてくれないか?(後日)

(上野課長)
雇用契約書や就業規則を確認したところ、当社の労働時間は、社長が仰るとおり、9時~17時でした。調べたら、労働時間には、「法定労働時間」と「所定労働時間」という考え方があるそうです。

(品川社長)
法定? 所定? どこが違うの?

<解説>法定労働時間と所定労働時間

1.  法定労働時間

労働基準法(32条)で定められた時間です。1週間につき40時間、1日につき8時間までと定められています。「~まで」となっているのは、すべての労働者の労働時間を一律に定めているのではなく、上限を8時間と定めていることに注意しましょう。この上限時間は、原則として、個々の企業で自由に変えることができません。

2.  所定労働時間

法定労働時間の範囲内で、会社が決定した労働時間です(1日7時間、7時間30分など)。9時始業で17時終業(休憩1時間)の場合、所定労働時間は、7時間となります。

図1 法定労働時間と所定労働時間

2 休憩時間は何時間必要なの?

(品川社長)
では、当社は「所定労働時間を1日7時間」と決めているわけだね。設立当時 は、そのようなこともわからずに決めていたな…。ところで、休憩時問は1 時間で問題ないのかな?

(上野課長)
1時間で問題ありません。当社は、所定 労働時間が7時間のため、休憩時間は45分でも良かったのですが、1時間と定め ても大丈夫です。ただし、1時間と決めているものを45分に短縮することは労働条件の不利益変 更になるため、簡単にはできないようです。

図2 休憩時間

1日の労働時間に応じて、次のように労働時間の途中に、休憩時間を一斉(原則)に与 えなければなりません。ただし、1日の労働時間が6時間未満の場合は、休憩を与えなくても問題ありません。

3 定められた労働時間を超えると?

(品川社長)
ところで、うちの場合、残業の割増貸金は、法定労働時間の8時間を超える18時から支払えばよいのだろうか、それとも終業時間の17時から支払うのが正しいのだろうか?

(上野課長)
残業は、労働時間と時間外労働時間についての理解がないと、混乱してしま います。また、残業させるためには、残業についての規定が就業規則などに必 要になり、一般に社員との間で協定を結ぶ必要があるようです。

解説 残業(時間外労働時間)

残業時間のことを、法令では時間外労働といいます。残業には、法定内残業と、法定外 残業があります。なお、1日の労働時間だけでなく1週の労働時間でも同様に、法定内残業、法定外残業 が生じ得ます(例:休日出勤した場合)。

法定内残業 所定労働時間が終了した時刻から、法定労働時間(1日上限)である8時間にあたる時刻までの部分の残業
法定外残業 法定労働時間であう(1日)8時間を超えて残業した部分

品川工業の場合、法定内残業の部分には、社内で取り決めた賃金が発生します(割増な しの時間単価を支払うことが一般的です)。法定労働時間を超えた18時以降の部分には、割増賃金が発生します。

 

金融円滑化法の再延長と中小企業の対応

今年3月に終了予定だった「中小企業金融円滑化法」が、平成25年3月末まで1年間再延長(最終延長)されました。今後の中小企業の資金繰り環境はどのようになるのでしょうか。

条件変更は9割超の成果下支えに効果を発揮

[中小企業金融円滑化法](以下、金融円滑化法)は、平成21年12月の施行以来、約250万件(約68兆円)の条件変更の申込みに対して実行率は9割(約63兆円)を超え、中小企業の資金繰りを支える効果がありました。

しかし、東日本大震災や円高の影響もあって、依然として中小企業の資金繰り状況は厳 しいことなどから、今回、平成25年3月末までの再延長(最終延長)となりました。

中小企業金融円滑化法のポイント

①中小企業等から返済の負担軽減の申込みを受けた場合、金融機関は、その相談に乗り 今後の「経営改善計画」「返済計画」を検討し、その実現に必要な貸付条件の変更等を 行う。

②経営改善計画がなくても、1年以内に計画を策定できる見込みがあれば、先に貸付 条件の変更等を行った上で、金融機関と一緒に計画作成の検討を行う。

③再延長にあたって、金融庁は、金融機関によるコンサルティング機能を一層発揮 することや、新規融資の促進を図るための資本性借入金等の活用、実現可能性の 高い経営改善計画の策定・進捗状況の適切なフォローアップなど、中小企業者等  の真の意味での経営改善につながる支援を強力に推し進める。

金融機関は経営者の強い意志を求めている

金融円滑化法では、金融機関は、経営改善計画の作成支援と条件変更後のモニタリング を行いますが、そもそも金融円滑化法は、返済猶予等が行われている間に、中小企業が金融機関の協力を得ながら、積極的に業務の見直しや経営改善に取り組むことにその目的が あります。

経営改善計画は金融機関から求められるから作成するものではなく、経営改善に向けて の実現性の高い根拠を積極的に示すものでなければなりません。そして、金融機関は「計 画を実行する経営者とその従業員に、経営改善への強い意志があるかどうかを見ています」(大手金融機関融資担当)といいます。

金融円滑化法が再延長されても、中小企業が返済猶予を含む貸付条件の緩和に対して、[実現可能性の高い経営改善計画]を作成・提出し、それを実行することが求められていることは、これまでと変わりはありません。

具体的な取り組みを明確にして金融機関にアピールする

企業には、経営改善への具体的な取り組み、決算書、経営改善計画などを積極的に情報開示することが求められます。

<経営改善への具体的な取り組み例>

  1. 資産の売却
  2. 役員報酬や諸経費の削減
  3. 新商品等の開発
  4. 具体的な収支改善策
  5. 技術力、販売力や成長性についての具体的な根拠
  6. 売上低迷の原因分析と改善策

例えば、販売力について、今後の売上増加が期待できるといった抽象的な説明ではなく、どのように売上の増加や収益の改善が見込めるのかを、新商品の評判、問い合わせ引き合い等などの具体的な根拠をもとに説明することが求められています。

また計画実施後、計画通りに業況が推移していない場合には、売上低迷原因の分析を実 施し、即時に改善のための対応を示すことなどが必要です。

積極的な情報開示があれば、金融機関もその評価や助言をしやすくなるのです。

経営者には、再延長に気を抜くことなく、これまで以上に強い意欲で経営改善に取り 組むことが求められています。

金融機関の協力を得ながら経営改善に取り組む事例

事例1 技術力を活かした新商品開発で収益改善に見込み

特殊な編物技術を有する中堅会社A社は、安価な中国製品との価格競争の激化から、単 価の引き下げを余儀なくされ、経常赤字が続き、債務超過状態となっていました。
しかし、A社では、自社の技術力を繊維以外に応用した新商品について大手製紙会社との共同開発を進めており、2年後には製品化の目処が立っていたことから、経営者はメイ ン行であるS金庫に対して、商品化について具体的に説明をしました。
A社の説明を受けてS金庫は、A社の技術力を独自に評価・分析して、商品化とその後の 収益改善が見込まれるという判断をしました。その結果、A社は継続的な支援を受けることができました。 参考:「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」

事例2 再建に向け、不採算店の閉鎖等を実施

食品スーパーを4店舗経営するB社は、2店舗は黒字を達成しているものの、他の2店舗 が大手小売店の進出による影響を受けて売上が落ち込んでいるうえ、新規出店の際の借入 金の負担が重いこともあって、3期連続の大幅赤字を計上していました。
B社では、経営再建を進めるため、主要行である×金庫の協力を得て、不採算店の閉鎖 と店舗建物の売却処分、全面的なコスト削減、営業体制の抜本的な見直し、役員とその家族に対する報酬・給与の削減等を中心とした経営改善計画を作成し、×金庫に提出し、その内容が認められました。その後、B社は経営再建に向け、計画内容の着実な実施と金融機関への情報開示に努めています。

個人事業主から法人への移行をお考えの方

この度、うめもと会計事務所では、税理士のフランチャイズチェーンQ-TAXに加盟、

新たに、Q-TAX目白店会社設立・起業サポートセンターを設立、個人事業主のお客様が法人へ移行する際のお手伝いをすることになりました。

もちろん、起業をお考えの方や、うめもと会計事務所と取引のない方も大歓迎いたします。

個人事業者から法人への移行はメリットとデメリットそれぞれありますが、

法人のメリットの1つに「青色欠損金の繰越控除」があります。これは青色申告の事業者は赤字を翌期に7年間繰り越せるというものです。

デメリットの1つに法人成りに際して登記費用などが発生するということがあります。

Q-TAX目白店では新規の会社設立の方に今ならキャンペーン価格78,000円で受け付けております。法人設立をお考えの方、一度Q-TAX目白店会社設立・起業サポートセンターにご連絡ください。

消費税の仕入税額控除のルール改正への実務対応

仕入税額控除を計算する際のいわゆる「95%ルール」が、税制改正により、課税売上高が5億円を超える事業者には適用されなくなります。

課税売上高5億円超が対象

これまで、総売上に占める課税売上の割合が95%以上であれば、仕入税額を控除する際、 売上時に顧客から預かった消費税額から、仕入れや経費等の発生時に事業者が負担した 消費税額を全額控除することができました(仕入税額控除の95%ルール)。

図表1 仕入税額控除の95%ルールの改正内容
課税売上割合 仕入税額控除方式
改正前 改正後
95%以上 全額控除方式 課税売上高5億円超 個別対応方式 また 一括比例配分方式
課税売上高5億円以下 全額控除方式
95%未満 個別対応方式 また一括比例配分方式

ところが、平成23年度税制改正により、平成24年4月1日以後に開始する課税期間から課 税売上高が5億円を超える課税事業者については、95%ルールが適用できなくなり、個別対応方式か一括比例配分方式のいずれかで控除する税額を計算する必要があります(図表1)。

個別対応方式と一括比例配分方式とは?

(1)個別対応方式

事業者が負担した消費税額を「その課税仕入れが何のために使われたものであるか」に よって区分(以下、用途区分)し、顧客から預かった消費税額から控除できるものと控除 できないもの等に分け、控除する税額を計算します(図表2)。

(2)一括比例配分方式

事業者が負担した消費税額の全額に課税売上割合を乗じて控除する税額を計算します。

課税仕入れ高の用途区分
用途区分 課税区分 消費税額等の控除可否
①課税売り高のみに対応する課税仕入れ

5

全額控除できる
②非課税売り高のみに対応する課税仕入れ
6
控除できない
③課税売り高及び非課税売り高の両方に対応する課税仕入れまたは区分不能

7

課税売上割合を乗じて得た金額のみ控除できる

対象となる事業者の実務対応は?

(1)非課税売上高を正確に把握する

非課税売上高には次のようなものがあります。これらの収入には非課税売上高の消費税 の課税コード(TKCの課税コード[3])を記録しましょう。

  1. 土地の譲渡収入
  2. 土地の賃貸料(1か月未満の貸付けを除く)
  3. 株券や国債などの譲渡収入
  4. 居住用住宅の賃貸料(1か月未満の貸付けを除く)
  5. 受取利息
  6. 従業員等から徴収する社宅家賃収入
  7. 社会保険診療報酬        など

(2)個別対応方式は用途区分に注意する

これまでは、課税仕入高のすべてについて、課税売上高のみに対応する課税仕入れとして 消費税の課税区分コード(TKCの課税コード[5])を記入・入力する対応で済んでいました。

改正後は、個別対応方式を採用する場合、販売費及び一般管理費などの課税仕入高を用 途区分し、それぞれに応じた消費税の課税区分ヨード[5][6][7]を記入・入力する必要があります。

課税売上高5億円以下、課税売上割合95%未満の事業者への影響

(1)課税売上高が5億円に近い事業者は注意

課税売上高が5億円を超えるかどうかは当該課税期間の課税売上高で判定することか ら、これまで課税売上高が3億円や4億円の課税事業者も売上が増加して5億円超になる ケースも考えられるため、事前に用途区分をしておくことが必要と思われます。

(2)用途区分に注意が必要

今回の改正で用途区分の考え方が注目されたことで、税務調査等では、これまで以上に 用途区分の合理性が問われることが多くなる可能性があります。

例えば、不動産賃貸・売買業、工務店、クリニック、保育園など営業収入に占める非課 税売上高が多い課税事業者や、たまたま固定資産である土地等を譲渡した課税事業者など、当該課税期間の課税売上割合が95%未満となってしまうような場合には、販売費及び一般管理費などの課税仕入高のすべてについて3つの用途区分にしっかり区分しましょう。

(3)今後の動向に注意

今回の消費税法改正は、限られた事業者が対象ですが、将来の消費税増税を見据えて、 これまでの例外・特例などの優遇的な措置が縮小される傾向にあります。今後の動向に注 意してください。

社会保険に未加入の場合の経営上のリスクとは?

健康保険・厚生年金保険などの社会保険は、会社や従業員の事情に関係なく加入がが義務づけられており(一部の個人事業者を除く)、未加入や脱退は認められていません。もし、会社が社会保険等への加入義務を怠っていた場合、経営上どのようなリスクがあるのでしょうか。

社会保険の届出を怠っていませんか?

<事例>年金事務所の調査が入った!
社員15人を抱えるA社では、労働保険には加入していましたが、「社会保険は高すぎるH
との理由で社長しか社会保険に加入していませんでした。ある日、将来や現状に不安を覚
えた社員が年金事務所に相談した結果、調査が入ることになりました。

社会保険(健康保険、厚生年金保険)は、社会保障制度の一環として国が運営する公的
保険であり、法令によって会社と従業員に加入が義務づけられています(図表1)。

最近、社会保険の未加入や保険料の未納付などが問題となっており、「社会保障と税の
一体改革」を前に、監督機関の調査も厳しくなる可能性があります。

社会保険料は、健康保険と厚生年金保険の保険料を会社と従業員との折半で負担しま
す。仮に、会社が社会保険に未加入だった場合、あとで保険料の遡及納付を求められたり、罰金を科されたり、従業員からの損害賠償などの経営上のリスクを負うことになります。事例のケースでは、次のようなリスクが考えられます。

社会保険料の遡及納付が求められる

社会保険の加入手続きを怠っていたA社は、最大で過去2年分まで遡って社会保険料を納
付しなければならない可能性があります。

事例のケースでは、社員15人で平均給与30万円の場合、会社負担分と社員負担分を合わ
せて、約2,800万円(※)になります。

いきなりこのような金額を請求されても困ってしまいますが、社会保険料の2年分とな
るとその負担はとても大きくなります。
※社会保険料77,676円×15人×24か月(東京都の例)

図表1 社会保険の種類と加入義務

社会保険の種類と加入義務
種類 給付内容 加入義務
健康保険 業務外の事由でけが、病気になった場合に保険給付される
  • 法人の場合は、社員(役員含む)が1人以上いる場合に加入
  • 個人事業でも社員5人以上(飲食業など除く)の場合は加入
  • パート、アルバイトでも、社員と比較して、労働日数と労働時間の両方が、おおむね4分の3以上であれば加入
厚生年金 老齢、障害、死亡について、年金が給付される

社員にも過去に遡って保険料を納付してもらうために、社員の同意が必要となり、説
明も一苦労ですし、給与関連書類をすべて訂正する必要があります。

また、未加入だった期間は、社員は自分で国民健康保険・国民年金に加入しているはず
ですから、その差額の精算も大変です。

損害賠償を請求される

事例のケースにおいて、10年前から社会保険に未加入の場合、加入は最大10年前から認
められますが、保険料は、2年分しか遡って納付できません。

会社が社会保険に未加入であったことで年金のカラ期間が生じ、社員が「年金受給資格
期間に満たない」「本来受給すべき年金額に満たない」などの不利益を被ることになり、
その損害賠償責任を負う可能性があります。

実際に、社員が会社に対して損害賠償を求めた例もあります。

社会保険の未加入には、経営上のリスクがあることを十分理解しておきましょう。

<事例>社会保険への未加入を理由に社員が会社を訴えた!
会社が社会保険の被保険者資格取得を届け出る義務を怠ったために、社会保険に加入で
きなかった元社員Bが、会社を相手取って損害賠償を請求する訴えを起こしました。
判決では、会社の行為は違法であり、労働契約上の債務不履行にあたるとして、元社員
Bの損害賠償請求を認め、会社に387万円余の支払いを命じました(図表2)。

図表2豊国工業事件(奈良地裁判決平成18.9.5)

 

在庫管理と実地たな卸を徹底しよう

会社は、販売や製造のために、商品、製品、原材料、仕掛品などを在庫(税務・会計では「たな卸資産という)として保有しています。在庫管理はきちんとできていますか。

在庫管理ができていないとどうする?

あなたの会社では、次のようなことはないでしょうか。

  • 倉庫内で在庫を探すのが一苦労。
  • 入出庫作業にかなり時間がかかる。
  • 過剰在庫、不良在庫、陳腐化品などが多い。
  • 在庫の紛失が多い。 □在庫の保管スペースが足りない。
  • 在庫がないと勘違いして余分に仕入れてしまう。
  • 欠品が多く、販売機会を失うことが多い。

もし、心当たりが1つでもあれば、以下の在庫管理の5原則を実行しているかどうかを 点検しましょう。

日常の受払管理をきちんと行う

商品等の入庫、出庫、移動、廃棄などがあったときは、現物と納品書、出荷伝票等を確 認し、速やかに、商品台帳等へ「単価」「数量」「金額」を記入・入力することで、常に、帳簿上で正しい在庫を把握することができます

倉庫内定期清掃、整理整頓をする

倉庫内の整理整頓をして、何が、どこに、どれだけあるかが一目でわかる状態にしまし ょう。倉庫内が整理整頓されていないと、配送ミスや出荷作業に時間がかかったり、欠品 や過剰在庫、不正確な実地たな卸の原因にもなります。また、横流しなどの不正を誘発し かねません。

実地たな御を定期的に行う

実地たな卸は、決算時には、必ず実施しますが、期中においても、毎月、少なくとも3 か月に1回の実施が理想的です。 実地たな卸を定期的に行っておくと、決算時の実地たな卸がスムーズにできるうえ、不良品の発見や滞留在庫、過剰在庫等を把握し やすくなります。 また、きちんとした在庫管理と実地たな卸による在庫記録等は、証拠資料にもなります。

在庫数が帳簿と合わない原因を調べる

実地たな卸で数えた在庫数と帳簿上の数量が合わない場合、その原因を調べます。 原因の多くは、受払時の商品、数量の誤りや台帳への記入・入力ミスのようです。

不良在庫などを定期的に処分する

実地たな卸で発見した、不良品や陳腐化晶、滞留在庫などは、ルールに従って、値引販売するものや廃棄処分するものに分けます。

事例 実地たな御に実施と記録で裁判に勝訴

家具販売業A社は、火災によって社屋や倉庫が全焼する事態に見舞われました。その後、損害保険会社との間でで保険金支払いを巡って裁判となりました。 保険会社は、在庫家具について、ある時点の在庫金額に、仕入高や返品率等を加算・減算して推計した約2,000万円を主張し、一方、A社は、たな卸記録等を根拠に約5,000万円を主張しました。 A社では、日頃から顧問会計事務所の指導を受け、決算期には、実地たな卸を徹底して行い、その状況をカメラでも記録していました。 裁判では、そのようなたな卸の記録等が証拠となり、A社の主張が認められて、全面勝訴となりました。

ここに注意!

廃棄処分する場合は、破損状態等がわかるように日付入りの写真や廃棄業者の証明書など証拠となる記録を残しておきましょう。

在庫管理と実地たな御の状況をチェックしてみましょう!

  • 商品等の受払いの際、速やかに商品台帳等へ「単価」「数量」「金額」を記入・入力している。 入出庫時には、管理担当者が納品書などの証憑書類と現物とを確認している。
  • 各商品等は、倉庫内の決められた場所に正しく保管され、どこに、何があるかが一目でわかるように整理整頓されている。
  • 決算時以外にも、実地たな卸を定期的に行い、実際の在庫と帳簿上の数量、金額に差異があった場合には、直ちに原因を究明している。
  • 実地たな卸の際にチェックしたたな卸票やメモなどの原始記録を保管している。
  • 社長自らが定期的に倉庫など現場に出向いて、商品等をチェックしている。
  • 外注先や委託先などに預けている社外在庫についても確認している。
  • 廃棄処分は、決められたルールにもとづいて責任者の承認を得て処分し、その商品の写真や処分業者の証明書などを残している。
  • TKCの「月例経営分析表」などを利用して、在庫に関する指標をチェックしている。

復興増税<法人税>はどう変わる!?

東日本大震災の複興財源を確保するための臨時増税を盛り込んだ複興財源確保法と平成23年度税制改正で積み残しとなっていた法案のうち一部が成立しました。
その結果、法人税はどう変わるでしょうか。

<法人税>臨時増税と恒久減税をセットで実施
法人税は、実効税率の引き下げ(恒久減税)と3年間の臨時増税との組み合わせが行われます。
平成24年4月から、現在の国・地方を合わせた法人実効税率が5%引き下げられ、法人税(国税)が現行の30%から25.5%に引き下げられます。また、中小法人(資本金1億円以下)の所得金額のうち年800万円以下の部分に適用される軽減税率22%(特例により18%)が19%(特例により15%)に引き下げられます。

法人税率の引き下げ
改正前 改正後
中小法人の年間所得金額
800万円以下の部分
22%(特例18%) 19%(特例15%)
中小法人の年間所得金額
800万円超の部分
30% 25.5%
普通法人 30% 25.5%

※同時に、研究開発などの企業向け優遇税制の縮小も行われるため、個々の企業によって影響が異なります。
※軽減税率15%は、平成24年4月1日から同27年3月31日までの間に開始する事業年度について適用されます。

以上のように、法人税の税率を引き下げたうえで、「復興特別法人税」として、法人税額の10%分が上乗せされます。

復興増税のうち法人税の税額推移表

現金管理の心得

現金管理を適正に行うことは、会社規模の大小にかかわらず、経営の基本であり、税務 調査でも厳しくチェックされる点です。

金庫内の現金は、1日1回、金種ごとに数え、実際の現金有高と帳簿残高が一致することを確かめます。ところが、社長が、会社の小口経費を立て替えたり、反対に、個人的な支払いのために会社のお金を借用する場合があります。この場合、精算が行われなかったり、ルールにもとづいて現金処理が行われなかったために帳簿上の現金と実際の現金が合 わないことがあります。

このような状態は、社長の公私混同を招くだけでなく、社内の気のゆるみを引き起こし、 社員による不正も起こりやすくなります。

現金管理のポイントは、社長個人のお金と会社にある現金を厳格に区別し、ルールにも とづいた処理と定期的なチェックを徹底することです。まずは、チェックリストを参考に、 現状を確認してみましょう。

現金管理の状況をチェックしてみましょう!

  1. 会社と個人のお金がきちんと区別されており、社長が直接現金の受払いをしていない。
  2. 社長以外の人が現金の管理責任者として明確に決まっている。
  3. 金庫と鍵は管理責任者が管理している。
  4. 銀行印は社長が保管している。
  5. 毎日の出納締め後に、「現金収支日報」などを作成し、管理責任者の承認を得る仕組みになっている。
  6. 管理責任者は、月に数回、帳簿上の残高と実際の現金残高とが一致しているかをチェックしている。
  7. 現金(または小切手)による集金、現金売上などは、その日のうちに銀行に預けている。
  8. 現金残高はなるべく少額にし、余分な現金は銀行に預けている。
  9. 売掛金等の入金は、銀行振込にしてもらっている。
  10. 現金で支出するものの範囲、1件当たりの支出限度額を決めている。
  11. 経費などの支払いで一定金額以上のものは銀行振込にしている。
  12. 支払いは領収書、請求書をもとに行っている。慶弔金など領収書がもらえないものは社 内発行の「支払証明書」などを使用している。
  13. 正規の手続きによらないメモ等による現金の支払いは禁止している。
  14. 仮払い等は上司等の承認を得ているものに限って支給するようにしている。
  15. 仮払金や旅費の精算は、用務終了後や出張から帰着後、速やかに行うことを徹底してる。