近ごろ「マタニティー・ハラスメント」という言葉を耳にします。妊娠中の女性に気持ちよく働いてもらうために、普段の言動でどんな点に注意すればよいでしょうか。
Aハラスメント(Harassment)とは「嫌がらせ・いじめ」という意味で、発言や行動が相手の尊厳を傷つけたり、不利益や脅威を与えることを指します。相手を不快にさせる性的な言動をする「セクハラ」、職務上の地位を使って精神的・身体的苦痛を与える「パワハラ」などはよく知られています。
マタニティー・ハラスメント(マタハラ)も最近報道される機会が増えてきました。妊娠、出産した女性社員や派遣社員が心ない言葉で傷つけられたり、嫌がらせを受け、自主退職に追い込まれたケースもあります。また、「妊娠を告げたら辞めろと言われた」など妊娠・出産を理由として解雇された例もあります。
家計的な事情や生きがいの追求などから、産後も働き続けたいと思う女性は増えています。いっぽう少子化で労働人口が減少するなか、政府も女性が活躍できる社会の創出を打ち出しています。にもかかわらず、第一子出産後、仕事を続ける女性の割合は4割弱と、80年代からほとんど変わっていないのが実情です。働く女性が安心して産休・育休を取れる環境が30年近く実現していない要因としてクローズアップされてきたのが、マタハラというわけです。
マタハラは法律で定義されているわけではありませんが、労働基準法や男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などに照らし、以下の状況は違法とされています。
- 育児休業規定がない
- 妊娠した従業員を解雇する
- 妊娠後も残業を強いる
- 出産した社員をパートにする
- 育休後、職場復帰できない
また、働く妊産婦を傷つける言葉の例としては、次のようなものがあります。思いやりから出た言葉でも、相手を追い込む場合もあるため注意が必要です。
「妊婦は残業なしでいいわね」
「フォローする身になってよ」
「子供がかわいそうじゃないの?」
「無理して両立しなくてもいいんじゃないの?」
妊産婦側も感謝していることをこまめに伝えたり、周囲への気配りは必要です。
4人に1人が経験あり
連合が今年5月に行った「マタハラに関する意識調査」によると、「マタハラにあったことがある」と回答した人がおよそ4人に1人(25.6%)いて、「セクハラにあったことがある」(2012年調査)と答えた17.0%を大きく上回りました。
同調査では「働きながら妊娠・出産・子育てする権利が法律に定められていることを知らない」と答えた人も5割強(50.3%)と、非常に高い割合でした。マタハラを引き起こす要因としては「男性社員の妊娠・出産への理解、協力不足」(51.3%)「会社の支援制度設計や運用の徹底不足」(27.2%)等が挙がりました。
つまり、働きながら妊娠・出産・子育てをする権利は法的に守られているにもかかわらず、従業員に周知されていない点に問題があるということです。妊娠・出産・育児に関する社内規定や制度を整備するとともに、周知をはかり意識を高めていくことが重要といえます。なお、連合が作成した『働くみんなのマタハラ手帳』は、マタハラを知る上でとてもよいテキストです。連合のホームページ(http://www.jtuc-rengo.or.jp)からダウンロードできるので、ご参照ください。