経営において、月次決算を行うことが不可欠です。月次決算の数値から業績をつかむには変動損益計算書が有効です。
毎月の業績は変動損益計算書からつかむ
所長 月次決算がきちんとできるようになりましたね。
畑楽 月次決算はできるようになったのですが、出てきた数値を見ても、何を、どう見て、どのように判断すればいいのかがよくわからないのです。
所長 月次決算で業績をつかむには、変動損益計算書を活用するとわかりやすいですよ。
畑楽 変動損益計算書とは、どのようなものですか。詳しく教えてください。
損益計算書と変動損益計算書の違い
通常、損益計算書は、まず売上から売上原価を引いて売上総利益を算出し、さらに販管費などの経費を引いて、経常利益を算出します(図表2・①)。
これに対して、変動損益計算書では、原価や経費などすべての費用を、材料費のように売上の増減に伴って増減する変動費と、人件費、家賃のように売上の増減に関係なく発生する固定費に分けます(図表1)。
変動費 | 売上の増減に伴って増減する費用 (例)材料費、商品仕入高、外注費、工場消耗品費など |
固定費 | 売上の増減に関係なく発生する費用 (例)従業員給与、時代家賃、支払利息、減価償却費など |
そして、売上高から変動費を引いて限界利益を算出し、さらに固定費を引いて経常利益を算出します(図表2・②)。
また、売上高に占める限界利益の割合を限界利益率(限界利益÷売上高)といいます。
変動損益計算書は業績判断に役立つ
畑楽 業績を判断するのに変動損益計算書が良いのはどうしてですが。
所長 変動損益計算書は、売上の増減に比例して限界利益が増減するため、損益計算書よりも業績を判断しやすいのです。
例えば、売上が20%増えれば、比例して限界利益も20%増加するため、「売上の増減によって限界利益がどれだけ増減するのか」をすぐにつかむことができます。ところが、通常の損益計算書では、売上原価に固定費が含まれるため、売上総利益が売上に比例しないのです。
畑楽 売上の変化に伴う利益の変化がすぐにつかめると助かります。
所長 また売上高をさらに「単価×数量」の式に分解すれば、「いくら売らなければならないのか(金額ベース)や「いくつ売らなければならないのか(数量ベース)といった検討もできるようになります。
1人探用するには、どれだけ売ればいいのか
畑楽 変動損益計算書を、どのように活用すればいいのですか。
所長 そば屋さんを例にしてわかりやすく説明しましょう(資料)。
ある、そば屋さんが忙しくなってきたため、アルバイトを月10万円で1人雇うかどうか検討しています。
この場合、1杯500円のそばを、あと何杯売れば、アルバイトの給料分の利益を稼ぐことができると思いますか。
畑楽 え~と、10万円÷1杯500円として、200杯ですか……。
所長 正解は500杯です。これは、l0万円を1杯当たりの限界利益200円(売上@ 500円-変動費@300円)で、割って求めることができます。
畑楽 なるほど……。これから変動損益計算書を注意して見るようにします。