消費税率引上げ後6か月が経ちました。消費税の処理ではリース取引や返品等において間違いが多くありましたが、消費税の価格転嫁については、「中小企業における消費税の価格転嫁に係る実態調査」(日本商工会議所・平成26年7月2日公表)によると、62.7%の事業者が全て「転嫁できている」と回答し、前回の引き上げ時より大幅に改善しました。来年10月には消費税率アップが予定されていますので、処理について確認しておきましよう。
1 リース取引における誤り
事例1
A社はコピー機や車両をリース(オベレーティング・リース取引)により賃借しているが、コピー機は経過措置の適用対象で、車両は経過措置の適用対象外のため(図表1)、施行日(平成26年4月1日)以後、消費税率を5%と8%に区分する必要があったが、経過措置適用のコピー機のリース料についても8%で処理していた。
〔解説〕
コピー機については経過措置適用のオペレーティング・リース取引なので、4月以後のリース料は5%で処理しなければなりません。車両については経過措置不適用なので、図表1のように平成26年3月31日までのリース料は5%、同年4月1日以後のリース料は8%となります。
※オペレーティング・リース取引とは、残価査定額がリース料から控除されるなどファイナンス・リース取引以外のリース取引をいいます。このリース取引の場合、指定日(平成25年10月1日)前に契約し、一定の要件を満たせば経過措置の適用を受け、施行日(平成26年4月1日)以後も消費税率は5%となります。
事例2
B社は会社の営業車3台をリースにより賃借していたが、そのリース取引が経過措置の適用を受けないオペレーティング・リース取引にもかかわらずファイナンス・リース取引と認識して、施行日以後のリース料も消費税率5%で処理していた。
〔解説〕
営業車3台のリース取引は経過措置不適用のオペレーティング・リース取引なので、施行日以後のリース料は8%で処理しなければなりませんでした。
この事例では、リース契約の内容をよく確認しておくことが必要でした。
※ファイナンス・りース取引は、原則的には売買取引とされ、図表2のようにリース資産の引渡時点の消費税率が適用されます。特例的に認められている支払いのたびにリース料を費用計上する場合でも、リース資産の引渡時点の消費税率が適用されます。
2 返品・値引などの際の誤り
事例3
卸売業の C社は、平成26年3月10日に商品Eを得意先に販売・納品したが、4月に入ってその得意先から返品の要請があり、今後の取引もあることなので4月20日に返品を受け消費税率8%で処理した。
〔解説〕
図表3のように、商品Eついては経過措置により消費税率5%で返品処理しなければなりません。というのも、施行目前に売上計上した商品等が施行日以後に返品となった場合、売上げを計上した時点の消費税率で返品処理することになるからです。
事例4
製造業のD杜は、平成26年2月に受注し製品を3月に納品して売上も計上したが、後日、注文数に食い違いが生じクレームとなった。結局、値引きすることで決着したが、対応に手間取り値引処理が4月になったので消費税率8%で処理した。
〔解説〕
この場合の値引処理は、経過措置により消費税率5%で行わなければなりません。というのも、施行日前に売上計上した商品等については、売上計上した時点の消費税率で値引処理することになるからです。
消費税の処理の間違い防止に向けたチェックリスト
①施行日をまたぐ取引について税率に誤りはないか請求書をよく確認しているか。
※消費税の仕入税額控除の請求書等の記載要件と同時に消費税率等についてもチェックします。
②返品や値引などで、税率に誤りがないよう返品等の商品等の販売(仕入)時点在などを確認した上で処理しているか。
③リース取引についてはその契約の内容を確認しているか。
※リース契約書等で、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引か、経過措置が適用されているかなど確認が必要です。
④クレジットカードの請求書がある場合、領収書、利用明細票等により各取引の消費税率を確認しているか。
※旧税率(5%)が混在している場合があります